2023年9月8日、モロッコで大規模な地震が発生しました。
この地震は、マラケシュの南西約72キロメートルのアトラス山脈付近を震源とするもので、マグニチュード6.8に達しました。モロッコでは過去数十年で最も大きな地震となり、多くの被害をもたらしました。
被害は広範囲で死傷者は数千人にのぼりました。山岳地帯の村々では救援活動が困難を極め、国際的な支援も受けながら救助活動が進められました。
地震にみまわれてから早くも一年経ちました。日本をベースに生活していて現在の様子が分からないのですが、人々の生活やインフラにも大きな打撃を与え、今も復旧活動が続いています。Bab el Khairにとっても少なからず(いえ、大いに)影響があったので振り返って記録を残しておこうと思います。
地震が発生してすぐに、混乱のなかマラケッシュ在住の日本人コミュニティーの活動や日本からのNPO・NGOの活動をネットを通してみておりました。わずかながら募金もさせていただきました。
モロッコ人、外国人ともに経済的に余裕がある人は、地震翌日から各々個人がスーパーで物資を買い、被災地に届けるスピーディーな動きが印象的でした。
山間部の丘陵地帯でもともと道が細くアップダウンが大きい田舎なので、交通手段は車くらい。行ける人は限られてます。(国立公園があり以前オンボロの車で行った際はオーバーヒートしました)
はじめは食料、そして衣料、毛布。
すこし落ち着いてからは仮住まいの設置。
冬を迎えるため、寒い山間部は防寒は切実です。
(マラケッシュ近郊でもスキー場はあり、冬はアトラス山脈の頭は雪に覆われます。幸いなことに2023年は比較的暖かく、雪がほとんど積もっていませんでした。)
そして壊れた住居の再建に向けて測量や検査がおこなわれ、準備が進められました。
地震発生三か月後のマラケシュ
マラケシュの旧市街や歴史的な建造物も大きな損害をうけて日本でも何度もニュースでながれました。震源から遠いとはいえ、どのようになっているか?地震後3か月の2024年12月にマラケッシュを訪れました。
いつもと変わらず賑やかな旧市街。コロナ明けで観光客で多く賑わっていました。通りを行き交う人、バイクや車がひっきりなしに通ります。
歩いていると、旧市街の中心部に行くほど壊れた建物が目に付くようになります。
古い街ということもあり、コロナ前から大規模な修復をしていましたので、新しく立て直した通りは被害が少ないように見えましたが、かわりに修復未実施の通りはチラホラと大きく崩壊している建物が見受けられます。
普段より大きな足場がかかっていたり、手つかずに放置されている建物は中が丸見えで放置されています。
崩れた断面からどのような素材で作られているのかが分かります。積み上げた日干しレンガ壁と葦のような植物で編んだ天井。手の込んだタイル装飾の豪華な内装。電線のパイプのほかに工業的な材料が使われていないようです。田舎の古い家と同様のシンプルな材料で建物がつくられています。
時間が止まったように壊れた建物と、バイクや馬などが通り過ぎるいつもと変わらない喧噪とのコントラストが印象的です。修復のため旧市街の主要な通りはすぐにお金が支給され、立ち退きがされていると聞いていたのですが、実際の作業には時間がかかるのかもしれません。
海外のテレビニュースで何度も取り上げられていたモスク。
塔のほとんどが崩壊し、プリントされた布で覆われていました。フナ広場の奥の方にあり目につきやすいですが、みんな気にせず通り過ぎます。
(報道は手短に届けられる対象を映していると感じました)
バブーシュ職人さん
当店で長年お世話になっていた工房もその影響を受けました。職人Nさんの工房は引っ越しを余儀なくされ、小さく間借りすることで、いったん全てを生産してくれました。ですが、残念なことに職人さん個人ではどうすることもできなく廃業されてしまいました。
丁寧な仕事ぶりで、自宅と同じ町に住んでいることもあり、何かあるとわざわざ家まで来てくれていました。計算があまり得意ではなかったようですが納品数は間違えず、納品日はいつも守ってくれていました。
頑張ってくれていたのですが、一人で作るには数量が多かったようで、毎日夜の10時まで作業が続くと聞いてました。また、材料費もコロナの後は高騰し手残りがすくなく仕事に対して「いつまで続けられるか…」と話していました。
私たちとしても、これまで大切にしてきた生産体制が変わることに少し戸惑いを感じていますが、急いで職人さんを探さなければなりません。
そこで、モロッコ雑貨屋をはじめたころしばらく生産をお願いしていた職人Fさんに連絡を取りました。当時行き違いがあり、一度は生産依頼をやめたのですが、その間もバブーシュ職人として頑張っていたようです。コロナのため住まいの田舎町で作っていたようですが、またマラケシュで場所をかまえることもあり、再びFさんにお願いすることにしました。
バブーシュの生産をやめた職人Nさんはほかの街へ引っ越しをし、駐車場の交通整理員をしているようです。
駐車場というと聞こえが良いのですが、単なる商店が並ぶような普通の路上で路上駐車のお手伝いをするものです。だれかに雇われているわけではなくボランティアの様な自主的な仕事で、オレンジのベストを着て「こっちこっち!」と案内し、立ち去る際に50~100円程度小銭を渡す日銭稼ぎの心もとない仕事です。
地震がきっかけで腕の良い職人を手放す結果となり大変残念に思っています。一時的な地震のお見舞い以上になにかできなかったのか?と反省しています。
生活と技術と伝統
コロナ過で観光客が減り、仕事が減ったために旧市街ではたらく人たちや職人の多くが廃業や引っ越しを余儀なくされたこともあり、バブーシュをつくる上質な皮も手に入りずらくなっています。
製品の質を守りたいという思いがある一方で、現実として資材不足は避けられません。その結果、生産量を縮小するしかない日々が続いています。
私たちは、今も職人たちと共に新しい仕入れ先を探し、より良いバブーシュを作るための道を模索しています。品質を妥協することなく、どうすれば私たちの理想を実現できるのかを考え続けています。
このプロセスは時間がかかるかもしれませんが、試行錯誤しながら、より良いものをお届けできるように努力していますので、引き続き応援していただけると嬉しいです。お待たせしてしまうこともあるかと思いますが、どうかご理解いただければ幸いです。
災難に嘆き悲しむことをやめなさい。哀れなる者よ。さあ、アッラーを信頼しなさい。
なぜなら、嘆き悲しむごとに災難は増してくる。嘆くのは間違いだと気づきなさい。
災難をあなたに与える御方をみいだせたなら、災難はあなたには最高の贈り物、この上ない喜びとなることを知りなさい。
もしみいださなければ、災難はあなたには拷問と化し、この上ない悲しみとなることを知りなさい。
災難はこの世に満ち溢れているのに、あなたはこのような小さな災難になぜ泣き叫ぶのでしょう?(サイド・ヌルシィ)
さあ、アッラーを信頼し、アッラーにお任せなさい。
全てアッラーに任せて、災難の顔に微笑みかけてごらんなさい。
そうすれば、災難もあなたに微笑みかけてくれるでしょう。
そして微笑むごとに、災難は小さくなり、形を(喜び)に変えることでしょう。